著者:鈴木裕さん

①本のかんたんな紹介
私たちの体は本当に「現代」に適応できているのだろうか。
本書は「旧石器時代の食事・生活スタイル」にヒントを得ながら、最新の科学的研究を踏まえて、現代人が抱える慢性的な不調や肥満、心身のストレスをどう乗り越えるかを提示する実用的な一冊。
②主なポイント
1.狩猟採集民の食事に学ぶ
- 農耕以前の人類は、肉・魚・野菜・果物・ナッツなど自然のままの食物を摂取していた。
- 穀物や砂糖、加工食品は進化的には新しく、人間の体に負担を与える。
2.現代病の多くは「食のゆがみ」から
- 炭水化物過多、過剰な糖質、加工食品の摂取が肥満や糖尿病の原因となる。
- また、座りすぎや運動不足、日光不足、睡眠の乱れも慢性不調を生む。
3.パレオ的な実践法
- 加工食品を減らし、野菜・果物・魚・肉を中心に食べる。
- 日光を浴びる、軽い運動を習慣化する。
- デジタル漬けを避け、自然に近いリズムの睡眠を心がける。
4.「食」だけでなく「生き方」を整える
- パレオダイエットは単なるダイエット法ではなく、「進化に適した生き方」に近づくことが目的。
- 精神的にも安定し、集中力や活力が高まる効果が期待できる。
③自分の考えや本への想い
本書が単なる食事指導に留まらず、睡眠、運動、ストレスマネジメントといった総合的健康管理を包括的に扱っている点である。従来の高タンパク食や糖質制限法は短期的な体重減少を目的とする傾向が強いが、本書は「疲れにくく、ストレスに強い体質」の獲得を主眼としており、健康的な生活リズムの定着を重視している。
さらに、本書は現代社会における文明病の発生背景を具体的に指摘する。具体的には、夜間の人工照明の使用、運動不足、加工食品中心の食生活、慢性的ストレスといった要因が、進化的に設計された人類の生理機能と不適合であることを示している。これに対して、旧石器時代の食事・生活様式への回帰を通じ、体内環境の調整と健康指標の改善を図ることを提案している。
本書では以下の方法が提示されている。加工食品の自然食品への置換、就寝前の光曝露制限(※1)、日常的な軽度運動の導入、自然環境への接触および呼吸法を用いたストレス軽減である。これらの手法は、体重管理の補助に留まらず、睡眠の質向上、疲労軽減、心理的耐性の向上といった多面的効果を期待できる。
結論として、痩せること自体が目的ではなく、「健康的に自分の体を整えること」が最終目標。体重や見た目だけで判断せず、内側からの健康を意識することが、長く持続するダイエットにつながる。
※1 光曝露制限:ある物体や環境、人が光にさらされる量を制御・制限すること
④まとめ
「昔の人類の食と生活」に立ち返ることで、体重管理だけでなく心身全体の健康を取り戻すことを目指す一冊です。食事制限のノウハウ本というより、ライフスタイル全般を人類本来の姿に寄せる健康哲学書として読むのがよいでしょう。
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