📙悪い夏

ミステリー小説

著者:染井為人さん

悪い夏 (角川文庫) | 染井 為人 |本 | 通販 | Amazon
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市役所の福祉課に勤めるケースワーカー・佐々木守は、26歳という若さで生活保護受給者のもとを回る日々を送っている。ある日、同僚が受給者に対して不正に肉体関係を迫っているという噂を耳にし、その真相を確かめるため一人の女性のもとを訪ねる。しかしその出会いが、守の人生をゆっくりと、しかし確実に狂わせていく。

物語が中盤へと進むにつれ、守は抜け出そうともがけばもがくほど、状況が悪化していく現実に直面する。一つの誤りを取り返そうとした行動が、次の誤りを呼び、気づけば後戻りできない深みに沈んでいく。まるで底なし沼のように、足を動かすたびに沈んでいく感覚が、容赦なく描かれている。

そして人は、落ちるところまで落ちたとき、冷静な判断を手放してしまう。本来であれば積み重ねるべき小さな選択や努力を捨て、“一発で抜け出す方法”へとすがるようになる。だがその焦りこそが、最も危うい。守もまた、一足飛びに現状を変えようとした瞬間から、さらに深い闇へと引きずり込まれていく。

本作で際立っているのは、そうした“焦り”や“弱さ”を見逃さない存在の不気味さだ*真に恐ろしいのは露骨な悪人ではなく、人の転落を見計らい、その隙に入り込んでくる者たちである。彼らは決して無理やり引きずり込むのではない。あくまで“選ばせる”。だからこそ、気づいたときには自分の足でさらに深みに進んでしまっている。

守の転落は、決して特別なものではない。むしろ、どこにでもある小さな綻びから始まっている*環境が人を追い詰め、思考を歪め、やがて“悪人”へと変えていく。そして恐ろしいのは、その過程がすべて“選択の積み重ね”として起きていることだ。ほんの些細な選択の連続が、誰しもを同じような境遇へと引きずり込む可能性を孕んでいる。

さらに物語を不気味にしているのは、人と人との“引き寄せ”の構造だ。落ちていく人間の周りには、同じように歪みを抱えた人間が集まってくる。それは類が友を呼ぶのか、それとも誤った選択の先で、必然的に同類と交差してしまうのか。いずれにせよ、一度その流れに乗ってしまえば、抜け出すことは極めて難しい。本作はまさに、「環境が悪人を作る」という現実を、冷酷なまでに描き出している。

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