📙神様の定食屋2 ごちそうさま、めしあがれ

ヒューマン系

著者:中村颯希さん

Amazon.co.jp: 神様の定食屋(2) ごちそうさま、めしあがれ (双葉文庫) : 中村 颯希: 本
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「料理を上達したい」という願いと引き換えに、未練を残した魂を憑依させられていた高坂哲史。
あの神様と会えなくなってから数ヶ月――いつものように妹と少し気まずくなり、ふと足を運んだ神社で、返事がないとわかっていながらも語りかける。その何気ない行動に、まさかの“返事”が返ってくるところから、物語は再び動き出す。忘れたくない味、忘れられない想いが、人と人を静かにつないでいくハートフルな物語だ。

前作同様、本作における料理は、単なる食事ではない。思い出や感情、そして亡くなった人とのつながりをそっと呼び起こす“大切な記憶の器”として描かれている

作中に何度も登場する「ごちそうさま」や「めしあがれ」という言葉も、ただの区切りではない。そこには、作ってくれた人への感謝や、一緒に食卓を囲むことへの思いやりが込められている。当たり前の言葉が、こんなにも温かい意味を持っていたのかと気づかされる瞬間が、何度も胸に残る。

物語の中心にあるのは、料理を通じて人が癒され、過去を少しずつ受け入れていく姿だ。「料理で心を救う」という軸は変わらないが、本作では人と人とのつながりが思わぬ形で明かされ、読み進めるほどにその優しさがじんわりと広がっていく。

中でも印象に残るのは、何気ない家庭料理に込められた“その人だけの記憶”が、ふとした瞬間に蘇る場面だ。特別な料理ではないからこそ、その味に宿る思い出がより鮮やかに胸に迫ってくる。
一皿の料理が、言葉以上に多くを語り、人の心をほどいていく――そんな優しい奇跡が、本作には確かに息づいている。

登場人物たちも、変わらず愛おしい。少し頼りない兄と、しっかり者の妹。ぶつかり合いながらも支え合う二人の関係は、相変わらず微笑ましく、物語の温度を優しく保っている。そして、お酒好きで自由な神様も健在だ。軽やかな存在でありながら、「誰かのために料理を作ることの意味」をさりげなく教えてくれる存在として、物語に深みを与えている。

そして今作では、物語の合間に見え隠れする“恋の気配”も見逃せない。まだはっきりとした形にはならないものの、登場人物たちの距離が少しずつ変わっていく様子に、思わず目が離せなくなる。料理と同じように、時間をかけてゆっくりと育っていく感情が、この先どう実を結ぶのか――その行方が気になって仕方がない。

忙しい日々の中で、食事はつい「こなすもの」になりがちだ。しかし本作は、料理をすること、誰かと食べること、その時間そのものの温もりを思い出させてくれる。食卓は、ただお腹を満たす場所ではなく、人と人の心をつなぐ場所なのだと、静かに教えてくれる。
読み終えたあとには、きっとこう思うはずだ。
「誰かのために料理を作りたい」「大切な人と、ゆっくり食卓を囲みたい」と。

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